先日、山形にあるビルダーのスタッフさんを新国立競技場などへ案内するという
明らかに人選ミスであろう依頼を受け、朝一の新幹線で東京に向かった。
巨大迷路化した新橋の地下駐車場内で怯えながらレンタカー会社に向かい、
借りたプリウスのシフトレバーにあるBの意味が分からずも出発したことに一抹の不安を抱え、
僕が運転する車には4人の女性が乗車し案内することとなった。
車内では、のっけから打ち解けることを許してくれる包容力と、機知に富んだ対応力を持ち合わせた
素敵な女性ばかりでとにかく楽しかった。いや、楽しませていただいた。
そして新国立競技場、国立新美術館、森美術館などを廻った。
楽しい時間とはひと時の夢の如くである。
僕の任務の最後は15時30分の搭乗手続き締め切りまでに彼女たちを羽田に送り届けることだ。
六本木ヒルズを出るころには時計の針が15時を指そうとしていた。
急がねば・・・
一人シンデレラ状態である。
すぐに首都高から羽田に向かった。
車内ではやはり楽しかった。
“これで送り届けたら、もう一生会えないんだろうなぁ~”と寂しさも交えた会話をしていた。
その時である。
突然、、耳の中に光が差し込み、フワッと時が止まった。
「キーーーン!」
「あっ!違う!」
思わず叫んだ。
首都高浜崎橋JCTを右ではなく左に曲がっていたのである。
カーブを曲がりきったところで全身の力が抜けきろうとしていた。
同乗者が女性ばかりでなければ、羞恥心も破壊され、尿漏れどころか尿ダダ漏れだったのではないだろうか。
頭の中にはジョージ・ウィンストンのイントロが流れ、つい数分前までの楽しくも哀愁のある会話が過去の追憶のように感じるのである。
「あ~ 終わった」
「4人分の航空チケット吹っ飛ばしたよ」
事の大きさに気付いた4人の女性が凍り付いていた。
しかし、すぐに「大丈夫よ、間に合わなければもう一泊出来るんだからそれも楽しいじゃない?」と、
天使の声を掛けてもらい、
「あなたたちはナイチンゲール様ですか?」と心に処方箋を差し伸べてくれたのである。
幼いころは「チンゲール チンゲール」と叫んでいた恥ずべき人間であるのだが。。。
すぐに首都高を乗り直し羽田に向かった。
リアルアクション映画の如く車中では皆が前を見て息を飲んでいた。
約束の時間までに3分オーバーで到着した。
お別れの挨拶も出来ぬまま、彼女たちと別れた。
ああ、悲しいかなミッション・インポッシブル。