ホテルのある天文館に着くと、豪雨と静寂を繰り返した。
下痢でトイレに駆け込み、俯きながら大の水を流す間隔に近いものがある。
しかし、旅とは忘れかけていた記憶を呼び覚ましてくれる美しいものであると改めて思った。
そこはグルメ通りと呼ばれる、路地裏的な要素を持ち合わせた通りである。
隙間なくコンテナに積まれ運ばれてきたであろう木枠窓やアイアン装飾、怪しさを増幅させるモロッコタイルに邪魔をするつる草、いつまでたってもやる気なくぶら下がる照明、
国も時代もミックスさせた多国籍文化の出来上がりと言わんばかりの建物が入口に鎮座していた。
マットビアンコやカラーミーバッドが鳴り響く夜もあれば、チェットベイカーやマイルスデイヴィスが流れる香り立つ夜もあるかもしれない。
いいね。いいよね。
綺麗になりすぎないように、汚くなりすぎないようにと秤の上でバランスを取りながら出来上がったものには記憶の奥から引っ張り出した美しさがあることを教えてくれる。