美容室である以上、たとえ市内の外れであってもSensualな建物を目指した。
美は細部に宿るわけで、仕草も体の先端部分の動きに目が行くわけで、
建物だって一番出っ張った部分に目が行くわけで、軒先をシュッと美しく仕上げるために
隠し雨樋という選択をした。
もちろん電線も地中埋設になっている。
そこで必ず聴こえてくるのは雨漏りの危険性やメンテナンスについてだ。
ノンノノンである。
普段は加齢臭のカタマリみたいな男だが、建物を引き渡した時に『喜ばせよう!』『感動させよう!』と想い想像を働かせた時は
俄然本領を発揮する。
よし!やるぞ!とアイニカモーゼ「here comes the hotstepper」流して、
んがんん? ってなるとバクダッドカフェのサントラに変更し、
更に迷宮入りすると音楽会の異端児 変り者と評されたエリック・サティー「ジムノペディ」を聴きながら、
『型にはまるんじゃない!』と天の声を聞くことで前に進めようとするのである。
ちなみにサティーは自身の音楽を『家具のような音楽』と言い残している。
客の邪魔にならない演奏、家具のように存在している音楽というのは重要なんだと。
話を戻して、内樋をつくるために軒先は垂木で伸ばせないため、間柱を挟み込んだ工法にしてある。
このことにより軒先の強度が倍となり、積雪による垂れの心配も不要である。